「動物から人間にうつる病気がある」
そう聞くと、驚かれる方がいるかも知れません。しかし動物由来感染症といって、動物と人間の間を行き来する病気はたくさん存在するのです。
もちろん、ペットから人にうつる病気もあります。
獣医師の仕事はそのことを隠して、皆さんにたくさん動物を飼ってもらうことではありません。また、危機感をあおって動物と人間の絆を裂くことでもありません。
重要なのは、正しい知識を持って動物を飼うことです。獣医師はそのお手伝いをする仕事なのです。
例えばトキソプラズマ症という動物由来感染症の終宿主は、ネコです。しかし、ネコをなでたり猫に触られたりしても人はまず感染しません。
また、爬虫類の多くはサルモネラという菌を持っています。これは小児には特に危険ですので、学校や幼稚園でカメを飼育するとき、エサやりなどはお子さんがやっても構いませんが、水槽は先生が洗うべきだと思います。
「どこに気をつければいいのかわからない」「どの病気が人にうつるのかわからない」
不安なまま飼育することは、ペットの遺棄やネグレクトにつながる場合があります。
動物由来感染症についての正しい情報を提供することは、獣医師にとって病気の動物を治すことと同じくらい大事なことだと思います。
特に重要と考える動物由来感染症をいくつか挙げておきますので、参考にしていただければ幸いです。読み物風にしてありますので、肩の力を抜いて読んでください。